【リフォーム成功の秘訣】リフォームで失敗しない為の5つの自己防衛策
執筆者 一級建築士 小田 雅彦 (おだ まさひこ)
ハウスメーカーに8年間勤務。新築・増改築100棟以上を担当、勤務地が神戸市であったことで、震災被害調査を実施。退社後その経験を活かし、2001年一級建築士事務所 住空間建築設計を設立。
リフォームをメインに設計・施工を行う。工務店を通さず職人に直接発注しコストダウンをはかっている。介護・シックハウス・耐震性を考えた、暮らしの安心を提案する「リフォーム安心ネットワーク」を主宰。
目次
はじめに
最近、テレビでリフォームの番組がよく放送されています。『少しは演出がされている』にしても、その番組に出ている家族は、リフォーム後の我が家を見て大変喜んでいます。
いや、感動しています。
一方で、高い費用をかけてリフォームをしたのに、後悔する人がいるのも事実です。
リフォームに失敗するのは何故なのでしょうか?
ここで、少しリフォーム業界の話をしましょう。新築の着工戸数が減少する中、リフォーム・増改築をする人が増えています。そうした中、住宅リフォームのトラブルは、全国で年間1万件と言われています。これも表面にでた数字で、実際はこれ以上有るでしょう。
リフォーム業は、業者登録制度も無く誰でも創める事が出来る為、他の業種からリフォーム・ブームを見込んで、建築知識がほとんど無い人達が参入しています。
そんな環境の中、改築のプランニングで、デザインのみを重視して家の構造を無視した提案をする人達がいます。増築では、一定規模を超えると、建築確認が必要ですが、解からずに話を進める事例も有ります。
そうした人達は、物を売る感覚でリフォーム工事を契約しようとする為トラブルとなるのです。
このレポートは、私がリフォームの現場で感じた事、相談頂いた方の声、自身の反省点をまとめたものです。リフォームに失敗しない為の自己防衛策として少しでも参考になれば幸いです。
防衛策 一章 こんな業者と契約すると
一般の方が、住まいに不具合を感じてリフォーム工事を依頼する場合、何処に頼むと良いのか、値段はどのくらいするのかと言う不安が有ると思います。
まず、契約してはいけない事例からお話しましょう。
相談に来られた方の話から
ある日、家のチャイムが鳴り出てみると、営業マンらしき人から、
『今、この近所で外壁の工事をしているのですが、通りがかった所、お宅の外壁に亀裂が入っているので、すぐにお知らせした方が良いと思い伺いました。』
とインターホン越しに言うのです。
ビックリして外へ確認に行くと、この営業マンは
『雨の日には、ここから水が浸入して内部が腐ります、すぐに直さないといけない。』
と説明を始めました。わたしが、
『急に言われても・・・』
と返事をすると、
『急がないと手遅れになります。今日、契約してもらったら、安くさせてもらいます。』
と契約をあおってきます。
一応、その場は契約せずに終わり、後日、
『本当に直さないとダメでしょうか』
と、私の所に相談に来られました。見に行くと、ヘアークラックというヒビが入っていましたが、雨が浸入しない程度の物だったので、
『心配ならシリコンを打ちましょう』
という事で解決しました。
確かに屋根・外壁は外部から見える為、痛み具合が業者に分ります。もちろんその不具合を発見して、適切にアドバイスしてくれる業者もあります。
では、どこで良い施工業者を判断するのか?
リフォーム業者も様々ありますが、大きく分類すると大手系列リフォーム会社・地元工務店・設計事務所・リフォーム専門会社になります。
近頃は新築の着工戸数の減少で、大手のリフォーム会社が需要の伸びているリフォーム業界に参入しています。
大手なら安心と思いがちですが、実際工事を下請けに投げている会社も有ります。また最近まで住宅モデルハウスで新築を売っていた営業マンが、リフォーム担当になっている場合もあるのです。新築とリフォームは全然違うのです。
図面から一からから作る新築は、図面と仕様書が決まれば、後は現場が進みますが、リフォームは、壁内や梁など見えない箇所を想定して見積もりやプランニングをします。新築以上の経験と知識が必要です。私も元は新築の設計や現場管理をしていました。100棟以上です。
同時に10軒を担当した事も有ります。しかし、リフォームをするようになった最初は、色んな工法で建てられた家がありますので、改修工事は本当に難しいと思いましたし、ミスも有りました。その経験が有って初めてリフォームの設計や施工が出来るのだと思います。
新築が売れないから、リフォームの担当に変わる程簡単では有りません。
業者の良し悪しは、会社の規模では無く、施主の希望を適切にとらえて、プロとしてアドバイスする姿勢を持った業者・担当者を選ぶ事が重要です。
また、先ほどの訪問販売の営業マンが、大げさに指摘して、値下げを口実にその日に契約しようとする商法には、じっくり家族と相談してから判断されても遅くは有りません。
完成後の住宅が思っていたイメージと違う
リフォームは、物を買うのとは違い、創るものです。完成後、満足してもらう為には、打ち合わせ時に、どれだけ完成イメージを施主に伝える事が出来るかです。施工内容を記した見積り書には、施工面積・使用材料といった明細が書いてありますが、実際これだけでは施主には分かり難いものです。
口頭で、専門用語を使いながら完成イメージを伝えようとするから食い違うのです。
分かりやすく図面、イラスト(パース)を使って説明してくれる業者を選ぶ事が大切です。
防衛策 二章 見積価格のからくり
みなさんは、リフォーム業者を選ぶ時、何を優先させて決めているでしょうか。
『値段』 『知名度』 『担当者』
実際値段で決めている人が、多いのではないでしょうか。もちろん、安いのに越した事はないのですが、何を基準に高いのか安いのか、判断が難しいのです。
相見積りは同じ条件で
複数の業者から相見積りを取るのは工事費や商品グレードなどを比較する為です。同じ条件で依頼しましょう。
お風呂のリフォームを例にとります。まず、相見積りを2社からとりました。これは、一つの基準になるので良いでしょう。A社は100万円、一方B社は110万円の見積りが出ました。
この時、同じ品質・仕様なのかが重要です。一般に見積りには、商品代と工事代は別々に記載して有ります。そこで見積りを比較すると、商品の品番は同じですが、工事代に差が有りました。
値段の高いB社は、
『水周りの工事は、湿気・水漏れ等で下地が傷んでいる場合が有り、白蟻の発生率も高いので、新しく使用する木材と既存の下地・土間には防腐・防蟻処理を見積りに入れています。』
と説明があり、もう一社はその説明は一切ありませんでした。
この場合、見積り書に書いていない工事まで、業者がすることはまず有りません。
ながい目で見ると、最初から見えない所まで考えている業者の方が、安心です。
すぐ値引きをする業者
他社の見積価格を聞くと、とたんに大きく値引きして、契約を求める業者がいます。値引きをするという事は、何かを削らないと出来ません。会社の利益を削る・使用材料の材質を下げる・職人の質を下げるといった選択肢となります。
この中で、材質を下げる・職人の質を下げる行為は、施主に迷惑がかかります。
ここで気を付けたいのは、何故大きく価格を下げられるのかです。値下げする根拠を説明した上で、価格交渉に応じる姿勢でなければ気を付けたほうが良いでしょう。
防衛策 三章 床下・屋根裏の話
家の『床下』を見られたことは有りますか?
私は、阪神大震災の後、神戸で耐震診断の依頼を受けて数多くの住宅を調査しました。地震で、構造体が壊れている場合があるので、床下・屋根裏も調査します。
地震の被害は別として、その中で感じたのは、床下・屋根裏の環境は、築年数だけは判断出来ないと言う事です。築30年のお宅の床下は、カラカラに乾いていて風通しもよく問題ありません。一方、築10年のお宅は、床下収納庫を空けると、カビの臭いがして、床下を除くと地面が濡れているのです。そして、水周りの床下の木材が腐っていたのです。
床下環境は家の寿命に、大きく関係あります。かといって、なかなか床下に潜って見るという訳には行きません。
そこで、あなたの家で、床が、フカフカしている所が有れば業者に相談してみましょう。水周りの工事・床工事の時に、進んで点検し、悪い所が有れば写真を撮って説明をしてくれる業者は、家の耐久性も考えてくれている『住まいのドクター』と呼べるでしょう。
但し、床板がフカフカしているからといって一概に、床下に問題があるとは言い切れません。それは、20年以上前のフローリングは、合板フローリングといって合板に表面だけ木目板が貼ってあり、その下の合板も薄い合板を張り合わせて厚みを持たせています。その糊が剥がれているだけの場合も有ります。
耐震チェック
1995年に起きた阪神大震災では多くの方が犠牲になり、家屋の倒壊も10万戸を超えました。不安が有るのは1981年(昭和56年)以前に着工した新耐震基準以前の建物です。地震の被害を最小限に抑える為には、我が家の耐震性能をチェックして、備えておくことが大切です。
ただ、気をつけたいのが、『地震がきたら家がもちませんよ』と不安をあおって、屋根裏・床下に金物を適当に取り付けて数百万円を請求する業者もいます。耐震補強は国家資格(一級建築士・二級建築士)(因みに耐震診断士は国家資格では有りません)を持った専門家が耐震診断をして、その診断に基づいて行うものです。
防衛策 四章 安心して契約する為に
リフォームは、新築と違い家族が生活をしている中で工事をするのですから、商談時に工事中の対応について事前に説明してくれる事が大切です。
工事前の気配りが出来ているか
一、 特に水周りの工事中は、何かと不便です。トイレの場合などは、1日何度も使う場所なので少しでも早く使えるようにしたいものです。そこで、事前に『○○日の朝から工事に入り、○○日の夕方より使用出来ます。』と予定を施主に伝える配慮が必要です。
二、 工事中は、材料を搬入するトラック等の出入りが有り、少なからず近隣の方にも迷惑がかかります。工事開始前に近隣挨拶廻りをキチンと行う業者か確認しましょう。
シックハウス対策
新築の家に越して来てから、疲れやすい、目や喉などの粘膜が痛い、腫れるなどの症状に悩まされている人が増えています。これは建材に含まれる化学物質が原因。身体が不調になるばかりでなく、このあとわずかな化学物質に触れるだけでも同じ症状が出やすくなる。
これが『シックハウス症候群』です。この症状は、全員にあてはまるのではなく体質により人によって様々。ただし、症状が出ないからといって影響を受けていないとは限りません。
主な原因となる建材や接着剤から放出されるホルムアルデヒドやトルエン等のVOCです。シックハウス症候群の症状に苦しんでいるのは主に子供や中高年の女性です。この人達は、家の中で過ごす時間が長い為だといわれています。もちろんリフォーム工事でも同じです。
対策をとっているのか、知識をもっているのかが重要です
まずリフォームに使う材料の正しい知識を業者が持っているのかが重要です。自然素材を全てに使用する事が理想ですが、予算の関係でどうしても新建材を使っている場合がほとんどです。
ただ最近は、新建材や接着剤にもシックハウス対策がされているものが出ています。材料を決める打合わせの時に確認しておきましょう。
契約後にキャンセル
誰しも高い買い物をした後に、後悔した事が有ると思います。まして、リフォームは形の無い物を契約するのですから、どうしても慎重になります。
営業マンと話をするうちに、契約の意思があいまいなまま、相手のペースで契約書に判を押してしまう場合があります。後で家族に反対されて契約をキャンセルしたいと思った時に無条件で解約できる安心契約システムとして、クーリングオフ制度を採用している業者がよいでしょう。
クーリングオフは8日以内に実行すれば支払った代金は返金してもらえます。ただし、工事にかかるまでに解約の意思表示をしましょう。
防衛策 五章 工事後の対応
アフタ-メンテナンス
安く工事をしても、やりっ放しでは意味が有りません。アフターメンテナンスがしっかりしている業者を選びましょう。アフターメンテナンスで良いシステムは、工事後、定期的にメンテナンスを知らせる案内をだしている業者はアフターフォローに前向きに取り組んでいるといえます。
おわりに
リフォームは、家族の思い出を残しながら、ライフスタイルの変化に合わせて使い安く快適にするものです。生活する人のこと、家のことを考えたリフォームは家族を豊かにします。
リフォームで夢をかたちにするポイントは住まいへの不満を書いてチェックシートをつくるのをおすすめします。
漠然としたものが整理されて、リフォームする箇所の優先順位や配分も決めやすくなります。また、リフォーム雑誌や本で情報を収集して、イメージを伝えやすい写真などがあれば切りとるなどして打合せに活用してください。
住宅設備機器などの取替の場合は、ショールームに行って実際の使い勝手や、寸法をチェックすることが大切です。
つたない文章を最後まで読んで頂きまして、有難うございました。
追伸
リフォームをお考えの方の相談を受け付けています。
リフォーム・増改築関するご相談例
- 玄関にスロープを付けたいのですが、介護保険は適応されますか。
- リビングに後から床暖房を入れたいのですが、いくらぐらい必要ですか。
- マンションなのですが、ガスコンロをIHに取替える事ができますか。
- 居間をLDKに広げたいが、壁を取っても大丈夫でしょうか。
ご相談は電話・FAX・Eメールでお願い致します。お返事に数日かかる場合が有ります。
相談は無料です。訪問・勧誘は一切いたしません。ご安心ください。